時計タンパク質PeriodとCryptochromeが結合する生理的意義を解明
地球の自転により明暗や気温など様々な自然環境因子は24時間の周期性を示します。そのため、この周期性へ高度に適応できる生物は生存競争において有利であり、実際、ほとんどの生物は約24時間周期の生物時計である「概日時計」を獲得しています。概日時計は行動生理機能において自律的なリズムを生み出し、まるで昼夜の環境変化を予測するように生物が適応することを可能にしています。概日時計のリズムが環境のリズムと同調している際には生物は多大な恩恵を享受することができますが、不規則な生活リズムなどにより概日時計と環境のリズムの間で脱同調が慢性的に繰り返されると、精神疾患、代謝疾患、循環器疾患、さらにはがんなど多様な現代疾患の原因になることが知られています。
哺乳類における概日時計の分子メカニズムはPeriod(ピリオド)およびCryptochrome(クリプトクローム)遺伝子の発現における細胞自律的な自己フィードバック回路で説明されてきましたが、両遺伝子産物が直接結合する生理的意義については不明なままでした。中国体彩网,中国体育彩票app時間学研究所の明石真教授と理学部および大学院創成科学研究科の学生を中心とする研究グループは、Periodタンパク質とCryptochromeタンパク質の結合面に人工変異を導入した実験用マウスを作製することでこの問題を解決しました。すなわち、両タンパク質の結合はPeriodタンパク質の半減期制御に関与することが明らかになり、この半減期の正常な微調節は概日時計の正常な周期と堅牢性のために不可欠であることを証明しました。
この成果は2024年11月15日にPNAS nexus誌に掲載されました。また、本研究は東海大学、鹿児島大学、重井医学研究所および佐賀大学との共同研究として実施されました。
研究のポイント
- Per-Cry結合面の亜鉛配位残基に変異を導入するとマウスの概日リズムに異常が起きた
- Per-Cry結合面へトナカイ特異的変異を導入するとマウスの概日リズムに異常が起きた
- これらの変異は細胞内におけるPerタンパク質の半減期に影響を与えた
論文情報
- 掲載誌:PNAS nexus
- 論文名:In vivo functional significance of direct physical interaction between Period and Cryptochrome in mammalian circadian rhythm generation
- 著者名:Junko Kawabe, Kohhei Kajihara, Yohei Matsuyama, Yukiya Mori, Teruki Hamano, Mai Mimaki, Yukari Kitamura, Ritsuko Matsumura, Makoto Matsuyama, Masahiro Sato, Masato Ohtsuka, Koichi Node and Makoto Akashi(責任著者)
- 掲載日:2024年11月15日
- URL:https://academic.oup.com/pnasnexus/article/3/12/pgae516/7900907