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「高次倍数化シンドローム」のメカニズムの一端を解明

 

 中国体彩网,中国体育彩票app大学院創成科学研究科(農学系学域)菊池涼夏助教らの研究グループは、神奈川大学理学部 岩元明敏教授および坂本卓也准教授、東京大学大学院新領域創成科学研究科 松永幸大教授、東京大学大学院理学系研究科 杉山宗隆教授との共同研究により、モデル植物のシロイヌナズナを対象として、ゲノムが高次倍数化すると成長が抑制される「高次倍数化シンドローム」という現象に着目し解析を行った結果、高次倍数体では細胞増殖と細胞体積の増大の両方が大きく抑制されており、その原因の1つが増加した染色体同士が何らかの理由で互いにくっついてしまう「染色体束化」であることが示されました。
 植物における倍数化は、農作物の生産向上のために実際に活用されています。「高次倍数化シンドローム」のメカニズムの解明は、生産性の高い農作物をより効率よく作出する手法の確立につながることが期待されます。
 本研究成果は、2024年7月5日(英国時間)にOXFORD ACADEMIC「Journal of Experimental Botany」誌にて公開されました。

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研究成果のポイント

  • 染色体の量が多くなることで、通常の現象とは逆に植物の成長が抑制される「高次倍数化シンドローム」を独自の手法を用いて解析。その結果、増加した染色体同士が何らかの理由で互いにくっついてしまう「染色体束化」が原因の1つであることが示された。

  • 「高次倍数化シンドローム」のメカニズムの解明により、生産性の高い農作物をより効率よく作出するための道が拓かれることが期待される。

研究の背景

 1つの細胞中の染色体が増加する倍数化は、農作物の生産向上などに活用されている重要な現象です。通常は倍数化すると植物の成長は促進しますが、シロイヌナズナでは高次倍数化すると逆に成長が抑制される「高次倍数化シンドローム」が知られていました(図1)。しかし、その実態とメカニズムについてはほとんど知られていなかったため、独自の手法での解析を試みました。


図1 シロイヌナズナの2倍体と倍数体系列
(Kikuchi and Iwamoto (2020) Cytologia 85:189–195. https://doi.org/10.1508/cytologia.85.189より引用)

研究の概要

 通常、生物は同じ染色体を2本ずつ持ちます。人間であれば、母親、父親から1本ずつ受け継ぎます。このような生物を2倍体(同じ染色体が2本あるので)とよびます。植物では、それぞれの染色体が倍加し、同じ染色体が4本、6本、8本と増えることがしばしば起きます。この染色体が増えることを倍数化といい、特に染色体数が大きく増加することを高次倍数化と言います。倍数化は普通、植物の成長を促進しますが、モデル植物のシロイヌナズナでは、高次倍数化すると逆に成長が抑制される「高次倍数化シンドローム」という現象が知られていました。本研究は、この現象に着目し、高次倍数化した植物の成長がどのように変化し、またその原因がどこにあるのかについて解析しました。解析の結果、高次倍数体では細胞増殖と細胞体積の増大の両方が大きく抑制されていました。そして、その原因の1つが増加した染色体同士が何らかの理由で互いにくっついてしまう「染色体束化」であることが示されました。

研究の成果

 染色体が多くなることによってなぜか植物の成長が抑制される「高次倍数化シンドローム」は、科学的に非常に興味深く、倍数化を応用した新品種の開発という点からも重要な現象です。しかし、そのメカニズムを解明するためのアプローチ方法がないため、これまでほとんど研究に取り組むグループがいない状況でした。私達の研究グループでは、細胞動力学的手法という成長を厳密に定量化する解析方法と、根端全体における染色体の状況を調べることのできる独自のwhole-mount FISHという手法(図2)を組み合わせ、この現象のメカニズムの解明に取り組みました。その結果、染色体同士がくっつくことが原因というこれまで予想されなかった特筆すべき成果を得ることができました(図3)。


図2 根端全体における染色体の様子(whole-mount FISHの結果)


図3 本研究成果の概要

研究の展開

 植物における倍数化は、農作物の生産向上のために実際に活用されています。「高次倍数化シンドローム」のメカニズムの解明により、生産性の高い農作物をより効率よく作出するための道が拓かれると考えています。

謝辞

 本研究はMEXT科研費新学術領域研究「植物構造オプト」 JP21H00375(研究代表者:岩元明敏)および JSPS科研費JP19K06718(研究代表者:岩元明敏)の助成を受けたものです。

 

掲載論文

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