多波長同時観測でさぐるM87巨大ブラックホールの活動性と周辺構造 ―地上?宇宙の望遠鏡が一致団結―
天文学史上最大規模の合同観測による観測成果が公開されました。同観測には32の国と地域、760名を超える研究者が参加しており、中国体彩网,中国体育彩票app時間学研究所の藤澤健太教授、学術研究員の澤田-佐藤聡子博士、および大学院創成科学研究科の新沼浩太郎教授*、元木業人講師*が参加する東アジアVLBI観測網プロジェクトも重要な貢献をしています。
2019年4月、地球から見ておとめ座の方向約5500万光年の距離にある楕円銀河M87の中心にある巨大ブラックホールの撮影画像が公開されました。この史上初めてブラックホールの撮影に成功したのと同時期に、M87を世界中の地上望遠鏡および宇宙望遠鏡があらゆる電磁波帯で観測を行った結果、巨大ブラックホール周囲の電波で明るいリング構造(光子リング領域)とは異なる場所からガンマ線が放射されていることが明らかになりました。この成果は巨大ブラックホールから噴出する高エネルギーなガスの流れ「ジェット」がどのように形成されるのか?そして、その多様な電磁波放射の起源は何か?について新たな知見を与える成果といえます。
本研究成果の詳細は国立天文台のリリースページよりご覧になれます。
【国立天文台】
https://www.miz.nao.ac.jp/eht-j/c/pr/pr20210414
M87の中心にある巨大ブラックホールのさまざまな波長の電磁波での観測画像。
使用した望遠鏡により観測波長が異なり、また解像度(視力)も様々なため見えているスケールも異なる。
Credit: The EHT Multi-wavelength Science Working Group; the EHT Collaboration; ALMA (ESO/NAOJ/NRAO); the EVN; the EAVN Collaboration; VLBA (NRAO); the GMVA; the Hubble Space Telescope; the Neil Gehrels Swift Observatory; the Chandra X-ray Observatory; the Nuclear Spectroscopic Telescope Array; the Fermi-LAT Collaboration; the H.E.S.S collaboration; the MAGIC collaboration; the VERITAS collaboration; NASA and ESA. Composition by J. C. Algaba
東アジアVLBI観測網
Credit: The EAVN Collaboration, Reto Stockli, NASA Earth Observatory
論文情報
この観測成果は、Event Horizon Telescope Science Multi-Wavelength Science Working Group et al. “Broadband Multi-wavelength Properties of M87 During the 2017 Event Horizon Telescope Campaign”として、2021年4月14日発行の天体物理学専門誌「アストロフィジカル?ジャーナル?レターズ」に掲載されました。
- Event Horizon Telescope Science Multi-Wavelength Science Working Group et al. 2021, ApJL, 911, L11
- DOI: 10.3847/2041-8213/abef71
- URL: https://iopscience.iop.org/article/10.3847/2041-8213/abef71
新沼教授および澤田-佐藤博士は同論文にも参加しています。
*時間学研究所兼務所員